TOMMY@日生劇場

新感線のいのうえひでのり演出、訳詞が湯川れいこのいわゆるTOMMYを初日に見ましたけど、駄目すぎた。
とにかくフラストレーションがたまり、1幕が終わった時にアンケート用紙に猛然とだめ出しポイントをあげつらったが、2幕があまりにトンデモな展開で口あんぐり。もうどうでもいいや、と丸めて捨ててしまった。

ええと、まず前提として、私はWHOのアルバムは聴いていない。ケン・ラッセルの映画も見てないし、ロンドン版、あるいはブロードウェイ版のTOMMYも見ていない、ってことを言っておく。
なのでこの日本語版がそれらとどう違うのかなどという判断はなく、だからどこまでが日本語版の弱点であり、どこがオリジナルの弱点なのかは知らない。
とにかくひどかった。


まず、幕が開いてTOMMYが親を知らない子として生まれるまで無言のダンスと説明マイムが続く。それが長い!見所がなにもない!父親役のパク・トンハがなだぎ武のやるディランそっくり!(笑)
そしてようやく歌い始めたら!1曲目がパク・トンハと母親役高岡早紀なのだが、歌詞がまったく聞き取れない。生バンドとのバランスの問題なのか何なのか、とにかく日本語の歌詞がまったく聞き取れない。しかも歌が下手くそだ。しかも歌詞がダサイ。譜割りがダサイ。思わず吉本新喜劇みたいにコケそうになってしまう。聞き取れない原因は譜割りの悪さもあるかもしれない。ずーっと耳をそばだてて聞いていて、ようやく聞き取れたところは、英語だったり。それもまた何だよ!っちゅーズッコケポイントである。英語だけ譜割りが合ってるから意味をなして聞こえるのである。
IT'S A BOY という歌の「男の子(休符)ですよ〜」のださいことと言ったら!
そしてTOMMYが親の殺人?を目撃し、それを口外するなと両親に諭される歌。またもやまったく聞こえない。
幕が開いてたっぷり30分も立っただろうか、ようやくTOMMYの中川アッキーの登場。
SHIROHでよかったので期待したが… れれれれ?れれ?ぱっとしない。歌がアッキーの声域にあっていないのかも。とにかくパッとしない。
その後、新感線の右近健一が「変態オジサン」で登場。これは面白い。ROLLYがいとことして出てきてようやく歌らしい歌を聴いた。
ピンボールの魔術師」はもちろんROLLY。よかった。これは歌だ。歌詞は相変わらず聴けないけど、歌は聴いていて気持ちがいい。あと、売春宿のアシッド・クイーン役のソムン・タクという韓国人女性が素晴らしい。
あと、開場前に「会場内が大きなピンボール・マシンになります。お客様は飛んでくるピンボールをはじき返してください」というのだが、客席に飛んでくるのがドッジボールのちょっと小さいくらいの玉。前の方に飛んだら、後ろを向いて投げろと言うのか、通路に落ちた玉は拾って投げろと言うのか?これは小道具がよろしくない。もっと大きい、空気を入れた風船にでもすれば、みんなが触るだけで弾んでいくのに。という感じでトホホと、下手な歌への、そして歌詞が聞こえないことへの憤りをアンケート用紙にぶつける。


そして2部。あれだけの仕打ちを受けたTOMMY。ピンボールのチャンピオンにはなったけど三重苦は治らず。お医者さんは声ばかりがいい、オペラ発声の人だが、引き続き歌詞は全く不明。
そしてなぜかTOMMYが両親の不況を買い、フラストレーションをぶつけられる。「いらー、いらー、いらー!いらー!いらー!」と高岡早紀がぶつけるのでずいぶんいらいらしてたんだなあ、と思ったらそれはどうやら「ミラー」と言っていたらしかった。同行者にそう気づいたことを後ほど告げたら「私もいらー!いらー!だと思ってた!」とのことなので私だけの空耳じゃないらしい。そして鏡が割れたら、なぜかTOMMYちゃんはすべてのトラウマから救われ「I'M FREE!」と晴れやかに歌って、視覚、聴覚を取り戻し、すっかりしゃべれるようになる。簡単だなあ。そして若者達のヒーローに祭り上げられるが、ファンの子がケガしたとかでバッシングされ… たはずが田舎でコミューンを作って、またそこへ人がわんさか来て楽しく暮らす。そこでなぜか若者達はアイマスクと耳栓、ギャグボールをくわえ、TOMMYの三重苦を味わいながらピンボールをはじいているが、よく分からない歌を歌いながらTOMMYがその若者達の耳栓を外すと、いきなり若者達に手のひら返しされ、TOMMYはリンチされる。でもリンチされてもなぜか次の歌では青空に真っ白な雲が流れ、「人生はシンボー!」とアッキーが歌い出してなんて晴れやかな浪花節なんだ!?と思ったらこれまた「人生はSIMPLE」の空耳らしい。と驚いている間にめでたしめでたし、で終わった… 

終わったよ… なんじゃこりゃ… TOMMYのトラウマはどこへ?お父さんの罪は?なぜ家族は幸せになれたの?変態オジサンやイジワルないとこも、仲良しファミリーになったの?
いろんな疑問がうずまく中、続くカーテンコール。しかもアッキーファンだかトンハ・ファンだか新感線ファンだかがスタンディング・オベーション
私の口にそのギャグボールをつっこんでくれ。さもなければ口があんぐりしすぎてよだれがだらだら流れ落ちそうです。


ええと、よかったのはROLLYとソムン・タクです。あともう1人、なんちゃらクイーンはよかった。あと子役の男の子もです。ボーイソプラノがかわいかったです。
アッキーも「I'm FREE!」の歌と、「人生はシンボー!」の歌は音域も合っていたらしく、よかったけど「See me, Feel me 」は全然心に訴えなかった。


でも、私が信用する人たちはケン・ラッセルの映画版が大好きなので、多分、「TOMMY」という戯曲自体が悪いんじゃないと思うの… でも2部は特にホントにストーリーがはてな、なんですが。


あー、1万2千円を返せとは言わない。おれの時間を返してほしい。
いのうえひでのりは何がやりたかったのか、全く分かりませんでした。
っていうか新感線でこないだの「朧の森」も歌のところは安っぽかったもんなあ〜〜
ロックが好きらしいけど、歌ものは向いてないんじゃないかしら〜〜〜。
「メタル・マクベス」はやっぱりバンドをやっている宮藤官九郎が歌詞を書いたのと、松たか子の歌唱力があったから成功したんだね、多分…