「エレンディラ」@さいたま芸術劇場

ちょっと遅刻して入る。芸術劇場の舞台を奥までひろーーーーく使った舞台。
お話もガルシア・マルケス原作とあって、壮大で幻想的な世界が広がる。


白鯨のように大きく太った冷酷無比なおばあちゃんと、親を亡くしおばあちゃんに育てられたあまりに無垢なエレンディラエレンディラに鯉をした青年ウリセスの物語。
肉襦袢を着たおばあちゃんは嵯川哲朗さんだったが、パンフを見るまでまったく誰だか分からなかった!
エレンディラは美波。あまりに無垢だがおばあちゃんに春を売らされる少女の役を丸裸で体当たり演技というやつだ。小ぶりでつぼみのような乳房が実に可憐であった。混血のラティーノらしい顔立ちでこの物語のミューズとしての説得力もあった。
ウリセスは中川晃教。アッキーはお醤油顔だが、白人の血が入った設定。マイケル・ナイマンの書いた悲しくも美しい歌がまたよかった。
前半の語り部品川徹、後半の語り部が(ガルシア・マルケスとおぼしき)作家、國村準。
蜷川芝居らしく、ぜいたくなキャスティング。
おばあちゃんの背中(肉襦袢)全面に掘られていたインディオの刺青みたいなのがすごくかっこいい。
美波ちゃんは、大野くんの「プー」三部作、「転生薫風」ではじめて見たが、清潔感があってとてもいい。歌も難しい旋律のユニゾンで、実はとても聞かせるのが難しいと思うのだが、見事にアッキーに合わせていた。
アッキーはいつもの通り、いい子でまっすぐな青年のアッキーだが歌が安心して聞けていい。
(和製ミュージカルは歌がお粗末なことが多いので、余り見に行かないのだが)
最後に絶望しながらそれでも飛べると信じようと、不安定に羽ばたくところは演出の妙か、ちょっと泣きそうになった。


しかしこの「母」の不在はもともとのガルシア・マルケスの作風なのだろうか。お芝居にはずーっとおばあちゃんの夫と息子(同じ名前)が亡霊となってついてまわるのだが、母の姿は一向に見えない。
ウリセスの母は「息子をなくすくらいなら最初からいなかったと思う方がましだ」という、息子へのすごく後ろ向きな依存を見せる。


エレンディラは自分の体を売らせる憎いおばあちゃんなのに、せっかく保護されて平穏に暮らしていた教会からおばあちゃんの元へ戻ったり、ウリセスにおばあちゃんを殺させた後は自由になるどころかおばあちゃんへの罪悪感に囚われの身となり、おばあちゃんへの借金を返すために一生、娼婦として働いたという。またおばあちゃんへの後ろ向きな依存がある。
逃げる時には舞台をぐるぐる円に走って、どこへも行けない感じを演出されていた。


いいお芝居だと思うのだが長くて(3幕。4時間近い)遠いのが原因か、チケットが売れていないらしく、平日のマチネを取っていると稽古が見学できるとか、アフタートークショーが聞けるとか、バックステージツアーとか、いろんな特典をつけてホリプロさんが頑張っているのだった。
ホント面白いお芝居ですよ。見て損はないですよ。若くてかわいい子のおっぱいも見れるし。