桜飛沫@世田谷パブリックシアター

橋本じゅんステキ。面白かったーー
山本亨はじめまして。


以下ストーリーに言及します。
2部構成。「蟒蛇如」と「桜飛沫」


ある人斬り悪党が、家族のために足抜けしようとしたが、その幸せを嫉妬した親友に家族を皆殺しにされ、心の折れた状態で山奥の村で医師をしていたものの、昔の自分を知る者がやってきて結局人殺しをさせられ、封印した復讐心に火をつけるまでが1部。2部は、ある人斬り悪党が、親友に「足抜けしたい」と言われ、その幸せそうな姿に嫉妬し親友の家族を皆殺し。その時の親友の姿から自分の所業を思い知り、以来過去に斬った者の亡霊におびえ、逃げるだけの男が、ついに昔の親友に出会うまで。


1部は、橋本じゅん様のキュートさと凄みが炸裂。徳市(じゅん様)に惚れている産婆で男性恐怖症で年季の入った生娘おたね(水野美紀)の描き方が、長塚圭史作品によくある「どうせ女は子宮でものを考えるんだろ」的でちょっと鼻につくが、でもじゅん様だったらあたしも惚れるし〜と思うので許してあげよう。でも長塚本人がやったシゲオの役だけは絶対に許さない。村の掟で、次の子供は降ろすか、産んで殺すしかない。そして妻はもう3度も堕胎を経験し、次の堕胎では命の保証がないと言われていた。なのに、「妻を愛しているからつい」中出しして妊娠させてしまう、というバカ男だ。バカ男の役だから仕方ないのだが、本気でそいつについて、そしてそういうキャラを書く長塚について考えるとムカつくだけなので(だってそんなの絶望的に本当によくいる男だから)考えないことにして見続けた。1部は市川しんぺーら種なし3兄弟が悪役だが、下手したら村で悪(ズル)の限りを尽くすしんぺーよりタチ悪いじゃん!ああ!考えると余計むかつくのでよそう。とにかく観劇中はそっち方面の思考を遮断していた&じゅん様キュートだったので大丈夫だった。
じゅん様は、登場シーンからもうそれはそれはありがたいくらい顔がでかくて、ドラえもんみたい。動きもかわいいよう。新感線は古田新太橋本じゅんがいるだけで、すばらしい。


2部、脚をケガした佐久間(山本亨)は300両の賞金首。いろんな悪党に狙われるが、手練手管とはったりで何とか生き延びている。そこで両親を殺され気の狂ったグズ(峯村リエ)と出会い、また、同じように両親を(佐久間に)殺され、自分も殺されかけ、以来佐久間に憧れて人斬りになった左京(山内圭哉)との出会いによって、ついに心のわだかまりを吐露し、楽になったところで、復讐心に火のついた徳市がやってくる。佐久間にとっては最高に幸せな死を迎えるだろう、と観客に予想させたところで血飛沫のかわりに桜吹雪が吹きつけ、桜飛沫、というわけ。山本氏は、本当に脚にギプスをしているような動きだったので、疲れるだろうなあと思っていたら、これが何と!去年、嵐の大野君の「幕末バンプー」の稽古中骨折でキャスト交代になった、元JACの人だった。つまり本当のケガだったというわけ。最初からケガ人を想定して書いた本だったのだろうか。ケガをきっかけとした佐久間の心境の変化などもすごくよくこちらに伝わってきた。


真木ようこちゃんの顔がこぶし大しかなかった!峯村リエは肉体的な迫力がいいなあ。水野美紀は、以前、新感線の舞台で演じた「男装の麗人」はかっこよかったけど、今回はじゅん様に惚れてる感じが今イチ。やはりテレビサイズの演技というか。自分では針を振り切ってるつもりだろうが、表現力がついてってないようだ。まあ、彼女のためにもじゅん様たち濃ゆい人とどんどんやるといいと思う(っておれ何様)。真木ようこちゃんは、タンカがすっきりと心地よかった。猫背椿は、やはり長塚の書く「女郎」の類型に填められていて、もっといい役者なのにもったいないなあ〜という感じ。しんぺーも力80パーセントって感じでした。


しかし長塚脚本は「はたらくおとこ」が何と言ってもすばらしかった。今回は、ボリューム的には2本立て、という長編だが、今回の満足度の6割は、じゅん様によるものでしょう。でも「みつばち」の時よりは全然いい。今日も楽しみました。