ちょっと考えた

私の尊敬する職業はプロレスラーの次にジャニーズのアイドル。
彼らは何万何千、売れれば何百万何千万という女子(10歳以下から60代まで。下手すりゃもっと)の乙女心とリビドーのミクスチャーという最強の狂気を一身に引き受ける覚悟を決めた者達だ。
東京ドームが一斉に悲鳴を上げる瞬間なんてちょっと気が狂っている。それをこちらのタガが外れない程度にさらにあおり、中毒にして、決してある境界線を越えることなく、さわやか笑顔で去っていく。
観客側にも中毒性があるが、演者側にも麻薬性があるだろう。だがそこで自分を見失わずに立てる者だけが生き残る。(時にはやられて精神のバランスを崩すものも出てくるが。)


一方、望まずにアイドルの座に座らされている男がいる。小栗旬だ。
彼は熱い常識人だ。舞台の上で魂が震えるような瞬間を知ってしまい、おそらくそれに中毒になっている。演じるたびに魂を振るわせたいと思っている。
だがそういう作品に出会えば、そうでない作品もある。また、そういう良作にもプロモーション活動がくっついてきて、彼もできるだけヒットしてほしいと願うので頑張って宣伝する。
その先々で彼はとまどう。舞台をやっても、映画をやっても、その客席に座っているのは「作品」ではなく「彼」を見に来た「乙女心とリビドー」の固まりの女子(恐らく10代〜4,50代)の狂気なのだから。
女子の乙女心。彼が何を言っても何をやっても、くすくす、キャー、くすくす。何となく揃ってスタンディング・オベーション。映画の舞台あいさつに行けば「投げChuして」の頭悪いボード。


ぶよぶよとして手応えがない。手を伸ばせば暖簾に腕押し、さもなくばずぶずぶと引っ張られる底なし沼。
ファンレターも周りの大人も「すごかった」「かっこよかった」と褒めそやす言葉ばかりで彼を包む。まるで精神科の、内側の壁にクッションが張られた拘禁室。全力でぶつかっても衝撃は「ぼよん」と吸収される。
そんな状況に彼はとまどい、脅えている。自分が命を削り、叫んでいた訴えはいったいどこに届いたのかと不安になり、あのすべてはムダだったのかと憤る。
「芝居」は物理的な意味で何も生み出していないことを彼は知っている。「売れる」ということはどれだけ物理的に利益を生み出し、どれだけ脇の役者や裏方にプラスになるかということも知っているのでそれでも彼は逃げたり投げ出したりはしない。
逃げ出さず、いろんな相反する衝動にさいなまれていることも素直に、時には鋭い言葉でインタビューに答えていく。取材者ならばさらに鋭い言葉を引き出そうと水を向けることもあるだろう。素直な彼は恐らくその誘いには容易に乗る。
そうして、彼の苦悩する姿までもが「萌え」の対象となって消費されていく。ずぶずぶずぶ。


先日、プラスアクトに木俣冬さんが書いた「カリギュラ」の総括記事が小栗ファンの間でちょっとした騒動を巻き起こしている。
上のような状況で、カリギュラという役に載せて毎晩怒りを吐き出しつづけた小栗君のルポだ。時には大きく振れすぎる小栗くんの針をも無情に、冷静に、記録しているなあという印象だった。
だがファンはこの記事にとまどった。乙女的反応でとまどった。「俺に拍手すんな」「よく分かりもせずスタンディング・オベーションなんかすんな」とも取れる小栗発言に「じゃあ、どうすればいいの!?」と。女子中学生的に反応した。そして混乱し、起こった不安の矛先は木俣氏に向いた。今までは好意的に書いてくれていたのに、小栗君を利用して商売している、話題性をあおり、自分が目立とうとしている、と。
挙げ句は木俣さんのブログに書かれたまったく関係のない一文を取り上げ、揚げ足を取るように非難した。まるで先生に言いつけるように。


木俣さんは大変面倒なものを敵に回したのかもしれない。乙女の恋心にはロジックは通用しない。「小栗君は言ってもいいけどあんたはむかつく!」「だって彼はこう言ったけど本心は違うかもしれないし〜」と言われればそれまでなのだ。彼女に罪はないが、嵐が過ぎるのを耐えるしかないだろう。皮肉にも彼女こそが最も小栗君が求めているファンの姿、勉強していて自分の意見を持つ、彼にとって手応えのある観客の姿に私には見えるのだが。(ま、ご自身はある程度のこういう反響を予想していたのであろう、「事件を起こしたい」とさえブログには書いてある。来るなら来い、という覚悟がおありなのでしょう。応援しますよ。論破しようと思ってもあなたの相手に論理は通じませんけどw)


そして小栗君。君は覚悟を決めないといけない。望むと望まざるとに関わらず、乙女心をわしづかみにするルックスと性格を持って生まれてきたのだ。黄色い声をどう振り払ってもそれすら「ツンデレ」という枠で消費されてしまう。仲よしのニノや潤君に聞くといいよ。亀ちゃんとも話すといいよ。彼らが「消費されること」にどう対処しているか。まあ、君なら「俺はそこで勝負していない」と突っぱねるだろうけど。だけどただ武骨でストレートで熱いだけじゃなくて、末っ子ならではの処世術も持っている君の事だからそう心配はしていないけど。とにかく体だけは壊さないで。でも弱った体さえも乙女は消費するぞ。「小栗君が胃が痛いと長身を縮めて丸まっている姿」なんて想像しただけで胸がキュンと(以下略)。無間地獄だね。だけどそれが人生、と私は思うよ。


てなことをつらつら書いてたら今、「りの君」ボックス後半が届いたよ!なんだこのトランプ!佐野泉がクローバーのA!!!!!ぎゃーーーー!やばい!このトランプヤバすぎーーーー!佐野引いたらバレちゃうじゃん!ぎゃーーーーー(バカ)