ミスティックリバー

買うだけ買って見ていなかったものを今日何となく見始めた。
殺され方がむごいから、きっと恨みが深いんだろう、というような
いわゆるドラマの真理が通じない実際の犯罪にやっとドラマが追いついてきた、という感じか。
お話自体も本当に「小品」という感じ。(言い換えれば大したことはない話)
大きな振れ幅はなく、小児性愛や殺人という、暗いし悲劇だがありふれた事件にふれた3人が
心の変化を遂げ、ある決着をつけるまで。
各自の、少しのボタンの掛け違いが雪だるま式にふくれあがり、それぞれ大きな過ちになる。
最後、復讐のためにと殺した相手が犯人ではなかった、と悔やむショーン・ペンが妻により正当化され、許されるところは
家族のもつ人の蘇生力であり、そして人間の限界なのだと思い知らされて背筋が凍る。
まさかアメ人はこれを「希望」と取るのだろうか。


クリンティは「抑制された演出」ではなく何もしていないだけだと思う。
編集や音楽で何をするだけでもなく、
力のある役者を集めて、演技をさせて、それをあまさずカメラで押さえただけだ。
ただ監督がクリンティだからこそ原作者は権利を売ったし、
クリンティだからこのキャストが集まり、スタッフが集まった。
そういう意味で客にとってはいい監督であり、
また役者にとっては、ほぼ1発取りというこれまたいい監督であろう。


クリンティ自体が救いのない話が好みで、
それだけでいわゆるアメ人の考える「芸術点」が高くなり、彼の力でいい役者があつまる。
そりゃアカデミー好みがするはずだよ。